ニオイの異常(嗅覚障害)
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■ 副鼻腔炎による嗅覚障害 |
嗅覚障害で最も多いのは副鼻腔炎によるものといわれています。感冒などの際に鼻の炎症が長引くと、副鼻腔と呼ばれる骨の空間に細菌感染を起こして炎症を起こした結果、膿が貯留してきます。この状態を副鼻腔炎と呼びます。最近の研究によると慢性副鼻腔炎では、長引く炎症性変化の結果、鼻の粘膜の変性だけでなく脳の一部(嗅覚に関係した脳)の変化が起こって、嗅覚障害が起こってくる可能性が示されました。
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さらに慢性副鼻腔炎では鼻茸などによる鼻の粘膜の炎症性変化と膿(うみ)の増加が起こります。また慢性副鼻腔炎を起こしやすい鼻中隔わん曲症など、鼻の空間(鼻腔といいます)の形態異常がしばしば合併しています。この結果、鼻閉(鼻づまり)や鼻腔内の空気の流れの障害が起こり、ニオイを感じるための呼吸性障害が嗅覚障害を起こしやすくしています。このように慢性副鼻腔炎の嗅覚障害は鼻粘膜の変化と鼻腔内の気流障害の組み合わさったものと考えられています。
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■ 感冒後の嗅覚障害 |
上気道炎のあとに起こる嗅覚障害は軽いものを含めるとしばしば経験されます。多くは一時的で、2,3日で軽快するのがふつうです。鼻閉(鼻づまり)や鼻粘膜の炎症による一時的な嗅覚の障害と考えられます。しかし感冒の後に発生し、長い間治らない嗅覚障害もあります。特に中年女性に多く、鼻粘膜がウィルスにより障害を受けた後に回復しにくいためと推測されています。なぜ鼻粘膜の回復が困難になっているか明らかではありません。
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さらに原因の一つとして血清中の亜鉛濃度の低下が考えられています。体の微量金属である亜鉛が不足すると味覚障害を引き起こすことはすでに解説しました(味覚障害と舌の痛み をご覧ください)。急性、慢性を問わず血清亜鉛低下により食欲低下、味覚障害、嗅覚障害などの風味障害が生じることは以前から指摘されています。なぜ亜鉛低下がこのような症状を起こすか明らかではありませんが、亜鉛低下により脳の神経繊維の働きが低下するためではないかと推測されています。
今まではニオイが分かりにくい、ニオイを感じなくなったという嗅覚障害について述べてきました。嗅覚障害には「本当のにおいとは違うニオイがする」「何をにおっても同じニオイがする」といったものがあります。これらは異嗅症 といわれます。特徴は異嗅症は感冒後や事故などによる外傷後、時間がたってから出現してくることです。
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感冒の後、炎症によって鼻粘膜が障害を受けるとニオイが分かりにくくなるだけでなく、本来のニオイとは違ったニオイがすることがあります。このようなニオイの感覚は鼻粘膜が障害されてから時間がたった修復過程で起こりやすく、徐々に改善することが多いようです。一方、何をかいでも同じニオイにしか感じないときには、高度の鼻粘膜の障害後や神経繊維の問題であることが多いようです。これら異嗅症といわれるものは感冒後や外傷後による急性期の嗅覚異常に引き続いて起こりやすく、粘膜や神経の回復時に起こりやすいものといえます。
何も臭うものがないのに臭いの感覚が起こる場合
このような感覚は神経繊維や脳の障害で起こると考えられます。頭部外傷後に起こることが多く、「常にいやなニオイがする」などと訴えられます。また脳の機能障害では「過去に経験したことのあるニオイが鼻につく」と訴えられることがあります。頭部外傷だけでなく、精神障害、ある種のてんかん発作でも同じような感覚が起こることがあります。またアルツハイマー病やパーキンソン氏病などの脳疾患でも嗅覚障害が起こりうることが指摘されています。
参考文献 )
@)古川 仭:嗅覚障害.
日本医師会雑誌2002;127(9):1483-1486.
A)古川 仭:嗅覚異常.
症候から診断へ−感覚器・運動器− 第5集、日本医師会雑誌2002;127(8):120-125.
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